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2006年04月25日

仮想空間の性能の問題

「SecondLifeに代表される仮想空間は、OSとして機能するようになる」
と言われてから、ずいぶんたつ。
実際に、Linden Labs.はずっとそれを目指してきたし、順調に進歩しているように見える。
最近の状況を見ると、ネットワークOSとして、MicrosoftやGoogleと競合するのではないか、
と思えるほどだ。

しかし現在Linden Labにのしかかっている問題は重い。
3pointDの記事によると、現在、SLのサーバーは2300台あるという。
20万登録ユーザーで、同時接続は夜間6000、昼間3000程度である。
サーバーに保管されているデータは15TBあるが、
3D用テクスチャをローカルPCにキャッシュする程度では、
キャッシュ率を上げることはできない。
そのためプレイ中は1ユーザーあたり1Mbpsを軽く超すトラフィックが発生する。
SLは恐ろしくコストパフォーマンスが悪いのだ。

20万ユーザーで2000台以上というのは、オンラインゲームの運営に比べると1桁多い。
また、トラフィックは2桁多い。
単純計算だと、マシン1台で同時接続が3(!!)ということになる。
SLの場合は、オンラインゲームとちがい、ほとんどのマシンがフロントエンドではなく
バックエンドのDBシステムになっていて、その台数が90%以上を占めているとは思うが、
全体としては、ひどいコストがかかっているだろう。
これだけのシステムを維持するには、おそらく月間1億〜1億5000万円はかかる。
Linden Labsは3月に13億円を調達したが、それでは1年ももたない。

さらに、追い打ちをかけるように、最近は「見るだけのユーザー」が増え、
通信トラフィックを押し上げる要因になっている。
マシンの維持費用よりも回線のほうが高価なので、これはダメージになる。
赤字を垂れ流すサービスをどれだけ維持できるか。
Amazonは最初の5年間はひたすら赤字だったが、SLはそういうパターンに入れるか?

ということで、当然、P2P化の可能性も検討されている。

この議論は1年前にgumonjiが通った道だ。
P2P化すると、「土地そのものや、スクリプトの実行時間を有料で売る」
といったモデルは、現在と同じ方法では成立しない。
また、ユーザー数が数万以上となると、かなり高度なクラッキングを受けるので、
ゴミデータが蔓延し、世界の品質が相当劣化する。

ハイエンドなMMO仮想空間サービスに数十万というユーザーを受け入れるのは、
まだ早いかもしれない。
いまの速度でチープ革命が進むとしてもあと4〜5年はかかるのではないだろうか。

ひとつ可能性があるとしたら、Googleに買われることだ。
4〜5年先にコストがOKラインを越える、面白いサービスがあるなら、
未来のために毎月数億円のコストを払える、
数少ない企業のひとつであるGoogleなら、SLを買うのかもしれない。
そうするとGoogle VRというようなサービスとして、
登場することになるのかもしれない。

Posted by ringo : 10:55 | TrackBack