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2006年11月12日
物理学と数学
ペンローズの「量子脳」理論を読んだ。
ペンローズは、
「意識は、脳細胞中のマイクロチューブルにおける波動関数の
収縮として起こり、それは計算不可能である」
と言っている。
私はこれまで、複雑系・カオス関連の本や、AIと呼ばれている分野関連の本を主に読んできたが、
それらとはまったくちがう切り口での「意識とは何か」についての強烈な仮説が展開されていて、
極めて強いショックを受けた。
本書では、「脳の機能は、原理的に計算機では再現できない」と主張しているが、
私がこれまで読んできた本はすべて「脳は計算機で再現できる」
という立場のものばかりだったからだ。
脳を計算機で再現できないということが、もし本当に証明されたら、
私は狂喜乱舞すると思う。人間の創造性の限界を、計算では求められないということだからだ。
ペンローズの説は極めて異端度が高いとされていて、本書の内容もかなり「トンデモ度」が高い。
しかし、ペンローズの主張がトンデモなのかどうかを自分で判断できるだけの
知識が私の中にないので、なんとも言えないのがくやしい。
AIや複雑系の本は、トンデモ度が非常に低く、理解もしやすいものの、
逆に「この研究をいったい何年続けたら核心に近づくんだろう?」という印象を持ってしまう。
しかしペンローズの主張は極めてラディカルで、核心に近づく速度が速いように思われる。
そのぶん、「まったくもって間違っていた」という結論が出るのも速いだろう。
しかし、「間違っていた」と言う結論から得られることも、かなり多そうだ。
ソフトウェアを開発するときに、いちばん中心になる部分から問題をつぶしていくのと
同じようなやりかたに思える。
ペンローズの主張がトンデモなのかどうかについて、自分なりの意見を持ちたい。
そのために、物理学と数学に関する勉強が、最低でも、本100冊分と
練習問題500個分は必要そうだ。5年はかかるだろうか。
しかし、いまのところは、新しい原理を発見するといったような、
本当の意味での数学者としての能力は必要ではなく、
多くの人たちの考えを理解して、結果を使う能力があれば十分だと思われる。
そのレベルまでであれば、がんばって勉強したら実現できるに違いない。
それでも理解できなかったら、自分には無理だということで、あきらめよう。
人間の創造性を扱う仕事をしていきたいなら、
人間の脳についてたくさん知りたくなるのは当然のことだ。