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2005年07月05日
遅いコンピューター
ここ2年ほど「極めて遅いコンピューターが世界を変える」という考えが頭を離れない。
ネットに正しいやりかたで接続されている人口を10億人よりも多くし、64億人に近付けるためには、
スローコンピューターが必要なのだ。
通信と処理能力と入力デバイスのチープ革命。
それと並行して進む、極小ハードウェアの進化。
風力や太陽光などの自然エネルギーの利用方法の高度化。
音声入力やペン入力などのユーザーインターフェイスの革新。
XMLをはじめとするネットワークアプリケーション開発基盤の整備、開発効率の向上。
誰でもが自由にアクセスできる、フリーコンテンツの質・量ともの圧倒的な増加。
ネット文化とネットビジネスに一般の人が理解を示しはじめたこと。
自分が、日本という、極小デバイスが大得意な国にいること。
世界中のいろいろなところで情報格差が広がっていること。
シリコンバレーの第一成功者世代が投資先を探しはじめたこと。
自分が、最前線でプログラミング作業をすることをあきらめたこと。
環境問題や南北格差についての認識が高まりつつあること。
さまざまな要素がそろってきたので、そろそろ、スローコンピューティング
を実現するための活動を本格的に始めたいと思う。
3年前だったら「荒唐無稽である」の一言で終了していたところだが、今はちがう。
現実的な時間内にできると確信できるようになった。
スローコンピューティングとは、
インターネットにアクセスできる最低ギリギリの零細コンピューターを使うことである。
スローコンピューターは遅くて、小さくて、軽くて、消費エネルギーが少なくて、
単純な入力デバイスを持っていて、通信機能があり、
既存のweb(の一部)にアクセスすることができる。
太陽電池+チューンずみ無線LAN+キーボードなし+画面なし+スピーカーあり
+マイクあり+微小ストレージあり+性能はファミコン以下+価格10ドル
みたいなものである。
たとえば「たまごっち」の原価は400円以下のはずだが、
それに1000円の無線LANデバイスを装着し太陽電池を接続するのだ。
そしたら約10ドルだ。その無線LANは10分に1回バースト的に通信をする。
たまごっちの画面でもwebをみることはできるし、音声入力も出力もできる。
500mまで届く(日本では違法な)無線LANであれば、
1000kmの「スローコンピューターの鎖」をつなぐためには、
2000台が必要である。1個の価格が10ドルだったら、
2万ドルでこの鎖を作ることができる。鎖に含まれるノードのうちのどれかが、
有線などでインターネットに直結されている。
そのノードは、NINTENDO DSで良い。100ドルである。
鎖の端にある端末から入力された検索クエリーは、
超長遅延に対応するために特別にデザインされたプロトコルを使って
8時間以上かけてGoogleのサーバーに届き、
また8時間かけて結果が戻される。
運が悪いと24時間以上かかることもある。
1日に1回しかクエリを入れられないという制限があってもいい。
スローコンピューティングにおいては、このように通信帯域も圧倒的に細く、遅い。
しかしそれでも、ぎりぎり、ネットにつながっているのである。
そのことだけが重要なのである。
遅くてもいいからとにかくネットにつなぎ、
発展途上国の人々がネットを使って検索したり、
遅いコンピューターを使ってプログラミングできるようにすることが重要だ。
スローコンピューティングの第一回の勉強会は、
アフリカでやることになるのだろう。
今日はケンさんとアフリカに取材に行く話をしていたが、
取材よりは、コンセプト映像をつくるための撮影ツアーのほうがいいと思った。