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2006年02月21日
マイクロファイナンス
クレジットカード等を持っていれば、Paypalを使って、
ロンドンに住むハッカーに1000円寄付することは、ほんの数クリックでできる。
さらにフィリピンで活動するNGOを間接的に使えば、
フィリピンのハッカーに1000円寄付することは、
数クリックではできないにせよ、数時間かければ、何とか、できる。
ところが、フィリピンのハッカーに1000円を貸し、
期日までに返してもらうことは、途方もなくむずかしい。
現時点では、それはほぼできないと言って良い。
お金を寄付することは、とても簡単だが、お金を貸すことは、とてもむずかしい。
ある地域でお金の貸し借りが成立するためには、その地域において、
小さなレベルから大きなレベルまで、「金融の生態系」が成立している必要がある。
たとえば、最低限、「個人を特定するための技術」が必要である。
そのためにはIDカードやパスワードの発行機構、あるいは生体認証などが必要になる。
次に、誰がいくら持っているかを管理するためのデータベースが必要で、
それらが長期にわたり改ざんされないことを保証する必要もある。
お金を借りている人がいなくなったときに、探し出す(取り立てる)
ための機構も必要で、そのためには最低限の通信手段そして人件費も必要である。
現在、お金を管理するための口座(ID)を持っていない人は、まずしい国を中心に、
世界に30億人以上いる。アジアには40億人もの人が住んでいるが、
そのうち、口座を持っている人は、17%しかいない。
のこりの人は口座をもっていないので、金融システムを柔軟に活用することができない。
その結果、貯金するとか、高額なものを買うときにローンを組むとか、投資活動をするとか、
そういったことが極端に制限される。そのため、生き方も、
長期的な計画を欠いたものになる。人生計画も、「困ったら親戚に泣きつく」
「金を持ってそうな人にたかる」「運まかせにする」といったパターンになりがちなのだ。
これらの行動パターンを続けることは、貧困をもたらす根本的な原因になっている。
途上国の人々がこのような「貧しい行動パターン」をするのは、
道徳教育がなってないからではなく、システムが整備されていないからなのだ。
情報技術を駆使すれば、人類の残り30億人全員に、
ちゃんと機能する個人用の口座を与え、使いやすい金融サービスを提供できる。
そうすれば、世界の貧困の問題が劇的に改善する。
CGAPという組織は、上記の仮説のもと、
要素技術から上位の生態系に至るまでを含めた、
途上国におけるマイクロ(個人用)ファイナンス・サービスを実現するべく、
途方もない努力を続けている。しかしこれはビジネス・チャンスでもある。
すでにおおきな銀行も投資の対象にするなど、ますます動きが活発になってきているのだ。
SourceForgeで見かけた、将来有望な15歳の裸足のフィリピン人ハッカーに
2万円ぐらい投資して2ヶ月間の食費を安定させ、
さらにNintendoDSベースのプログラミング環境を買えるようにする。
2ヶ月後、彼は完成したプログラムを10ドルで30社に売り、
3万円を売り上げる。彼は利息を含めた25000円を返済し、5000円をふところに入れる。
こうして彼は来月も生活できる。
このようにして個人のレベルから、貧困を解消していく。
マイクロファイナンスの考えかたは、途上国だけでなく、日本のような国に
潜在的に存在している貧困に対しても、有効に機能するような気がする。
人類の残り30億人の中には、途方もない才能が眠っているはずだが、
それをうまく見つけだし、協力体制をつくる手段がない。
しかしマイクロファイナンスの実現によって、「人類の残り30億人」が、
「我々を含む方の30億人」のパーティーに加わる。
めちゃくちゃ面白いことが起こりそうな気がするのだ。
マイクロファイナンスに関するCGAPの本はこちら: Access for All
Posted by ringo : 20:35 | TrackBack
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